古き良き日の「レッド」で起こった小さな事件

こんにちは。

知沙都です。

私がガールズバー「Red Moon Bar（レッド）」で働き始めてから2ヵ月くらい経った頃でしょうか。

ちょっとした事件が起こります。

前の記事はこちら。

ガールズバー「レッド」でバイトを始めた頃１
ガールズバー「レッド」でバイトを始めた頃２

その日、私は昼職後の逆シンデレラ出勤。
逆シンデレラ出勤：深夜0時に帰っていくシンデレラの逆で、深夜0時からから出勤すること

平日の深夜だったのでレッドの店内はガラガラ。

それ自体は、当時のレッドにとっては特に珍しいことでも何でもなく。

1人か2人くらいはお客様がいたかな？

ところが。

私がいつも通りにバックヤードに入ると、キャストの女の子たちが集まっていました。

ただならぬ雰囲気。

な、何だこれは・・・

こんなことは初めてです。

見ると、女の子たちに囲まれてみゆさんがしゃがみこんでいました。

そして「ごめんなさい、ごめんなさい」と女の子たちに謝っているのです。

な、な、な、何なんだ！？？

もしかして泣いてる！？？

みゆさんについては「ガールズバー「レッド」でバイトを始めた頃1」の記事でご紹介しましたが、若くて美人で優しいバイトリーダーです。

年上のキャストやお客様みんなから可愛がられているみゆさんが、何かみんなにめっちゃ謝ってる！？？

この日は店長のタケさんがお休みの日で、レッドには社員が誰もいませんでした。

とはいえ、キャストはベテラン揃い。

普通にお店を回していくだけなら何も問題はないはず。

・・・はずだったけれど、何か問題が起こってしまったらしい。

みゆさんが何かやらかして、お客様を怒らせてしまったとか？

不注意で何かを壊してしまったとか？

お金に関わる重大なミス？

「ど、どうしたんですか・・・」
（空気が重すぎて、ようやく勇気を出して聞けた私）

みゆさんのお姉さん的存在、さくらさんの話によると。

あるお客様2人とみゆさんで「飲み比べをしよう」ということになったそう。

テキーラのショットをテーブルにずらりと並べ、1杯ずつ乾杯しながら双方同時に飲んでいきます。

最初は「負けないですよ～！」なんて言いながら飲んでいたみゆさん。

しかし、（結局勝敗がついたのかは分かりませんが）テキーラを短時間で10杯ほど飲んだみゆさんはフラフラに。

自力で立ち上がることもできなくなり、とても仕事を続けられる状態ではなくなってしまいました。

そして今に至る、と。

私が出勤してくる少し前に起こった出来事だったそうです。

「大丈夫？気持ち悪い？」

「お水飲める？」

うずくまったままのみゆさんに声をかける先輩たち。

しかし、朦朧としているようでまともに返事ができない。

そうこうしているうちに、みゆさんは崩れるように床に倒れてしまいました。

や・・・

や・・・

やばいぞ・・・

たたたたいへんだ！！！

これは急性アルコール中毒ってやつか・・・！？

救急車！？？

もう今日は営業してる場合じゃない！？？

内心うろたえまくる私。

ベテランの先輩たちはあくまでも冷静に振る舞っていますが、穏やか過ぎる様子がかえって非常事態であることを表していました。

バックヤードにはあまり広いスペースがなく、もちろんベッドなどはありません。

椅子はあるけれど、ぐでんぐでん状態のみゆさんを座らせておくことができない。

仕方なく、バックヤードの隅にお店のロゴ入りベンチコートを敷いて、その上にみゆさんを寝かせておくことに。

だだだだいじょうぶなのか・・・

みゆさん意識ある？

し、し、し、しなない！？？

この当時、私はまだ「潰れた人」を見慣れておらず、何より私自身に潰れた経験がありませんでした。

とにかく気が気ではなかった。

一応そのまま営業を続けましたが、あまりお客様は入らず。

この日に限っていえば幸いでしたかね。

みゆさんはその後どうにか起き上がるも、バックヤードで吐いてしまい、女の子たちが接客と交代で介抱しました。

2～3時間後、系列の別店舗から社員さんが到着。

さくらさんとゆうきさんが連絡していたのです。

みゆさんはまた「ごめんなさい、ごめんなさい」と謝りながら、社員さんの車に乗って帰っていきました。

みゆさんは翌日にはいつも通り出勤。

「ご迷惑おかけしました」と申し訳なさそうに言われて、大事に至らず良かった、と胸をなでおろしたのでした・・・

さて。

まぁぶっちゃけ、飲み過ぎてぶっ潰れるなんて事件というほどのことではないんですけどね。

場を盛り上げるため、売上のため。

水商売のお店では日常茶飯事です。

キャストは飲めてナンボみたいなところがありますからね。
（大量飲酒の危険性は絶対に忘れてはいけませんが）

ただ、当時のレッドにとっては事件だったのです。

店長であるタケさんの方針は、キャストの女の子にもお客様にも負担を強いないこと。

女の子はお客様の顔色を伺いながらドリンクをおねだりしなくていいし、無理してお酒をたくさん飲まなくていい。

お客様も席料だけでのんびり長居してもらって全然構わない。

レッドはそういうお店だったので、女の子がべろんべろんに泥酔することなどまずなかったのです。

実際、タケさん時代には私が知る限りこの一件だけでした。

先輩キャストたちも、自分がどれくらい飲めるかを実はよく分かっていなかったのかもしれません。

普段ガンガン飲むことがないですからね。

それに、この日はタケさんがいなかったのが不運。

タケさんがいたら、みゆさんが無茶して潰れる前に止めていたんじゃないかなぁ。

お客様の気分を害さないように、上手く言ってさ。

テキーラ10杯はさすがに恐いけれど、後の時代のレッドでは飲み過ぎて潰れること自体は珍しくなくなっていきます。

そんな日が来ることをまだ知らない、穏やかなレッドで起こったみゆさん泥酔事件のお話でした。

ではでは、今回はこの辺で。

お読みくださってありがとうございました。

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